季節は春に

(産地の声) vol.1738 一老農のつぶやき         2026.3.4

 早三月。暦の上では3月5日は啓蟄の日だ。

 冬から春へと季節が進み、地下に潜っていた虫たちが、躍動する季節だ!と地上に出てくる。秋から冬に向かっての厳しい寒さに乗り越えるのに、さなぎや卵を産み落とし、春を待って生命をよみがえらせる時がきた。虫たちが一斉に動き出すのだ。

 

 地上は、と言えば水仙が芽を出し、早いものは花を咲かせている。その他の雑草も動き出し初めている。今のうちに田や畑を耕耘してきれいにしておきたい。農的には、雑草をはびこらせることは得策ではない。

 だが緑の世界は心が和む。落葉樹は、冬に入る前に葉をすっかり落とし冬を迎え、大寒を過ぎる頃から吸水活動に入る。外からは見えないが、木々は節分前後から地中深くから吸水活動を始める。そしてこれ以上入れきれないほど体内に蓄え春の気温上昇に感応して一斉に新芽を出し始める。桜は花を咲かせるのが先だが、花が散ると同時に新芽を出し夏を謳歌する。

 今から60数年前、レイチェルカーソンは春を楽しむために、小さな別荘に行った。そこで、例年だと春には草むらに虫たちが動き回り、池には小魚がはねる。想定していたのとは違い、生き物が全くいないことに気がつく。「これは一体何なのだ!」春が沈黙をしてしまったことに衝撃を受けた。

 海洋学者でもあった彼女は、調べてゆくと、化学物質(農薬)のせいで生き物が死に絶えてしまったことに愕然とした。すべての生き物は、食物連鎖という生態系で存在していること。そしてその系の中で生物濃縮という現象が起きてやがてその濃縮化学物質が生命を脅かすことを、「沈黙の春」という書で警告をした。

 その10年後、スウェーデンのストックホルムで最初の国連人間環境問題会議が開催され、以後世界は環境問題という課題に取り組むことになった。ほぼ同じころローマクラブから「成長の限界」が発表され、資源と地球の有限性が指摘される。

 そのあたりから、農の世界ではオーガニック農法が叫ばれ、世界的に広がってゆく。持続的人間社会の有り様を求めて、というのが有機農業への探究だったように思う。

 科学技術が、大気汚染、水質汚染、土壌汚染を引き起こし、そうではない道=持続的世界を目指してまた、命を守る農法として有機農業研究会が発足したのだった。

 春は田や畑の手入れして種をまく季節だ。農に生きる人たちは、どこかに命を守り人々が永遠に続きますように、という思いを抱いている。だから、時給100円でも自然のことだ、とやってこられたのではないか。今週は、大根やキャベツ長ネギ、ほうれん草など伸びすぎ傾向があるが、皆さんにはいっぱい食べて命の養生をしてほしい。              

byおかげさま農場・高柳功