(産地の声)vol.1716 一老農のつぶやき 2025.9.17
ムラの田んぼはすっかり刈り取られ、我が家の田んぼだけが残る。
その残された田んぼにコンバインを乗り入れ稲刈りをしている。刈り取っていると、ツバメが群れをなして飛び回っている。稲刈りの機械音で虫たちが飛び出し、それを狙ってのツバメの群れが舞う。なかなか優雅な眺めです。
雀は実を食べるが、ツバメは生きて動いているものしか食べない。昆虫食なんだろう。その次には刈り取り跡の田んぼに降り立ったシラサギがカエルやバッタをついばんでいる。生き物の群れがざわつく中でコンバインを運転するのも一興だ。毎年のことだが、我が家の作業場で乾燥籾すりをするのだが、トンボが舞い込む。大きなオニヤンマというトンボで最近ではなかなか見ない。
オーガニック農法をするというのは、何も安心な作物=食べ物を作るだけではない。それよりも自然の生き物が豊かになってほしいということもあるのだ。
かって私の子供の時代には6月にはホタルがいっぱい出て、うちわで捕まえられるほどだった。そして秋には、青トンボ、赤とんぼが群れをなして飛んでいたものだ。そうした生き物豊かな自然を取り戻したい。豊かだった自然を取り戻そうという運動でもある。
学校給食にオーガニック米を完全自給するいすみ市に視察研修に行ったが、最初は無農薬米つくりではなく、兵庫県豊岡市のトキの来る所にしたいという願望から始まったという。ムラの人達もともかく農薬三昧の農法ではなく、昔のようにホタルが飛び交い、トンボが飛び交う自然を取り戻そうという地域住民の思いがあった。私もそうだが、民間稲作研究所の稲葉さんに指導してもらい有機米を見事にみのらせ、給食の自給達成になった。いすみ市長さんはオーガニック給食の会の全国のリーダーだ。
数年前全国大会が東京中野で開かれたが、賛同市町村長さんが30人くらい参加討論してた。AIだの技術革新などと論調激しいが、人間のいのちがあってこそだと思うが、はっきり言って農薬は毒だ。基準値以下ならば、というが毒には変わりない。
毒だからこそ基準を定めているのであって、無害なものならば基準もへったくれもない。お米が高いから小麦を食べようなどと言うがそれもいいかもしれないが、農薬という基準からすれば、お米の除草剤の成分グリホサートの許容基準は0.1ppmだが、小麦の場合30ppmまで良しとしている。まあ、どうなろうがお国が定めた基準に準ずるという人はそれはそれでいいだろう。選択は自由だからね。
おかげさま農場・高柳功