(産地の声)vol.1712 一老農のつぶやき 2025.8.20
猛暑が続く。我が家には3カ所に寒暖計を置いてある。作業場の軒先の温度は39度を指していた。別の温度計は42度を、家の中の土間にある温度計は35度を指していた。暑いわけだ。
畑の野菜も干ばつ気味で、今出荷している空心菜などが固く育ってしまっている。「固めでいいのかなあ。申し訳ない気がする」などと娘は言うが、仕方ないだろう。水がかけられる圃場はまだいいが、やむを得ない、のです。
とはいえ、我が家でも食べているがもう少し何とかならないか、とも思う。それでも野菜を食べることは大事だ。人間の身体にとって大切なビタミンやミネラルの供給源だから。栄養補助食品だとかの人工栄養よりはるかに優る(と思う)
当地では、稲刈りが進む。ムラの田んぼは3分の1くらいかな。我が家は、稲穂が垂れ下がってきているが、田植えが遅いせいか黄金色にはちょっと届かず、9月に入っての稲刈りになりそう。
お米のことについて何回か書いてきたが、TVのコメンテーターや週刊誌情報、政治家の発言を聞いていると全く歴史を知らず、現場を知らずの発言ばかりだったが、文春(月刊誌)の2氏の内容は的を得ている。
一人は、元バレーボール日本代表の中垣内祐一さんの「コメ生産者の声」だ。「困りますよ高くて」と連日報道されてきたが、この報道にはある視点が不十分だ。それは田んぼでコメを作り続ける生産者の声だ。
そして、(コメを作る)私たちから見ればこの現象は単なる価格の問題ではない。もっと根深い、そして国家の根幹に関わる「食糧政策」の問題だ。バレーボールの世界に長らく身を置きコメつくりに関わって4年の新規就農者であるが、スポーツの厳しさを超えるほど、過酷な世界だと実感する。
過去45年間の国の農林予算の推移を見ると、欧米では五~八倍増に対し、日本では三七%減だ。国内の安全保障を守る下支えをしてこなかった、その「支えの弱さ」だ。今まで疲弊してきた農家が急に元気になるはずがない。むしろこの一時的な価格上昇すら「問題」として押さえ込もうとする政府の姿勢に農家は大きな失望を感じている。「儲け」でなく「持続性」が問われているのにだ。
最後に、-今、誤った政治判断があれば日本のコメつくりは確実に終わる。-と結んでいる。(全く同感!)・・・・・久保田新之助さんのも冷静な取材だったが、紙面の都合上割愛。文芸春秋九月号をご覧あれ。皆さんの食と命の問題だよ。
おかげさま農場・高柳功