コメの将来

(産地の声)vol.1703 一老農のつぶやき           2025.6.18

 それにしても、だ。新聞の一面に、コメ適正価格は?と題して【消費者2000円、生産者は3000円台。将来の安定供給に不安】との見出し。

 

 コメの将来に不安を感じている。というが、何が不安なのだろう。生産の現場は不安どころか、もうコメつくりはしない、不耕作地が進行してるというのに。

 近隣の状況は、米価が上がったと言って新規に取り組む農家は一軒もなく、反対に稲作農家の離農は数軒あった。我が家にも、田んぼをやってほしいと隣村から来たが、現状でもう無理だと断らざるを得なかった。

 やっていない人達が勝手に言いたいことを言ってるが、そう簡単にできるというのなら自ら取り組んでほしい。やれるものならやって見せてみろ、と言いたい。

 お米問題を通じていかに日本人が劣化しているのを感じる。人間のいのちの元である食べ物に対する意識、見識の低さがあきれてしまう。

 適正価格とは何だろうか。トヨタ自動車の利益は4兆円を超すという。自動車の適正価格はいくらなんだろう。適正価格で販売してるから利益が出ているのだろうが、さらに低燃費車だと30万円、車種によっては40万円と補助金が出ている。(税金だ)

 お米は真逆で、平均的稲作農家で自給10円、新潟大学の調査でも300円だったというが、利益どころではない。国県の最低時給以下の現状までほっておいた日本国民の責任は重いと思うが、どうだろう。(4兆円あれば全国民のコメが買える!)

 その昔、フランスを訪問したときのカルチャーショックを思い出す。ちょうど日本はお米の作りすぎ?と言うことで減反政策の真っ最中の時であった。日本はお米だが、かの国は小麦が主食。で「お国の自給率はどれくらいですか」と尋ねたら「180%です」「それで問題にならないのですか?」と聞くと「それでいいのです。食べ物があってこそフランス人は安心していられます」と。

 コメが余るから仕方がない側面もあるかもと考えていたのだが、国によって全く違う価値観を持つことにショックを受けたのだった。

 食べ物を商品としか見ない国と、大自然の恵みに感謝しつつ、自然を守り次世代へと続く生産力を温存し、永続的な民族の繁栄を考えている国との違い。

 ビートたけしが週刊誌で「小泉首相は、郵政民営化をしたが、その次の小泉大臣はお米の民営化をやるんじゃないの」などと茶化してたが、案外当たらずとも遠からずかも知れない。 同期の稲作農家のお母さんが「報道を見ていると、何が何だか分からなくなってきて・・・・」と現今の論調に揺さぶられていた。

                   byおかげさま農場・高柳功