(産地の声)vol.1696 一老農のつぶやき 2025.4.30
先週ようやく代掻きが始まった、と書いたが、今度はようやく2日前から田植えが始まった。
ムラの田んぼは、ほぼ田植えが終わり、植えてない代田が我が家の田んぼで、まるでジグゾーパズルの残りのピースを埋めるかのようだ。
紙マルチ栽培は、慣行栽培より資材と手間がかかる。慣行は、苗を用意する者と田植機があれば始まれるが、紙マルチの場合は、紙マルチを運ぶトラックが必要で2人では足りなくて3人はいないと始められない。
今は、50数枚の田んぼをやっているが、増やそうと思って増えたわけではない。近所や親戚に何とかやってくれと頼まれていつの間にか50数枚の田んぼをやっていた、と言うのが実情だ。
田の持ち主が頼みに来る、「先祖からの田んぼを荒らすわけにはいかない」「周りに迷惑をかけてはいけない」と口々に言う。この田んぼがあったからこそ家族が食えてきた、と言う思いがあるのだ。
少ないながらも日本国民の腹を満たすために稲作に取り組んできたと言う思いもある。小農といえども自分の食べる分以上は他人のためだ。
しかしながら報われないのだった。時給10円までに追い込まれている。
世間=国や県は時給の標準額を決めているが、農業に働く人には適用しようともしなかった。話題にもされなかった。もうやってられない、と言うのが稲作農家の心情だろう。
農に携わり、地方に生きてきた人々は、単に農業だけをするのではなく川を守り、山を守り、地域の道路普請や、地域の景観、自然、環境を整備してきた。
藤原正彦さんは美しい日本の農村を残そうといっていたが、自然と人間の営みをこれほど折り合いをつけている国民はないだろう。よってTPPはやるべきではない、と対談で語っていたように記憶してるが、いかがだろう。
話が、迷っているようだ。
昨年から、東京の会社の皆さん、幼保連携こども園の皆さんが稲作り体験を始めた。田植えから除草、そして稲刈りと手仕事での体験なのだが、土に触れ、稲という生き物に触れる体験は意義ある経験になると思う。
その前に、我が家の田植えを終えておこうと思っているが、はたして準備万端といくか、天気もあるので難しいかな、などと気をもんでいる。
おかげさま農場・高柳功