有機農業をやる理由

(産地の声)vol.1599 一農家のつぶやき。         2023.6.14 

 今、何故有機農業なのか。私は農業高校で近代農業を学んだ、が。

 私の意識変革の始まりはレイチェル・カーソンの「沈黙の春」だった。彼女は、海洋学者だったと思う。ついでに言えば、前作「我らを巡る海」?も素晴らしい著作だった。

 

 彼女は科学者である。そして自然をとてつもなく愛した人でもあった。彼女の自然描写は読み手を夢中にさせる。

 要点は、かって地球上に存在しなかった化学物質が生態系を著しく損ねるという。自然に放たれた化学物質は、時間をかけて自然に生きる生き物に蓄積し、機能不全を起こす。最悪は死に至るというものだ。人間は、農薬=化学物質という地球上に存在しなかった物質を作り出してしまった。生き物はそれを処理できない。

 彼女のメッセージは、核と同じく人間が制御できないことはやめよう、やるべきではないということだった。目の前の利益(害虫を殺すという)の為に後の生態系への影響を考えれば、やるべきではないということと教えられた。

 一方、福岡正信さんという人が、自然農法を実践、いわゆる近代農法という化学肥料化学農薬を使わず自然の摂理に沿った著作を発表し、農のあり方を考え直すきっかけをつくってくれたのだった。

 国もようやくオーガニックを25%にすると目標を立てるようになった。日本有機農業研究会が1972年に誕生したが、半世紀かけてようやく日の目を見るようになったことは喜ばしいことだと思う。人間も自然生態系の一員なのだから自然から離れるということはできない。それこそ母なる大地自然の恵みのおかげで人間の命があることを、深く深く自覚できる人間でありたい。

 追憶的な気分でつぶやいてしまった。

 もっと前向きなことを考えようと思うのだが、目の前の田んぼや畑のことを考えるとこれまた大変なことになってる。天気が雨続きで仕事がままならないのに雑草だけは元気でその対策に手が回らない。

 夏野菜のキュウリやナス、ミニトマトも出来はじめたのだが、これがまた取れたり取れなかったりで、上手くいかないものだ。連れ合いがどこから引っ張り出したのか、壁掛けの標語をかかげた。そこには「自分の思ったような人生はない。魂はその中で磨かれる」と書かれていた。・・・そんなものかも知れないと心が宙をさ迷う。                 byおかげさま農場・高柳功