経済成長と環境の攪乱

(産地の声)vol.1598 一農家のつぶやき。         2023.4.5

 入学式のシーズンだ。かっての入学式の決まり文句は、「桜の花もほころび・・・」だったが近年は当てはまらない。今年は彼岸中に桜が咲いてしまった。

 

 私の住むムラの4月は恒例の「お遊び」というお祭りだった。4月の15日から17日と3日間かけて奉納歌舞伎、村の歌や踊りの村祭りだった。その祭りには神社に続く通りを、ムラの若者が万灯で練り歩き神社に奉納したものだった。

 その通りには桜が数本あり、満開の中練り歩く姿はなかなかのものだった。

 今地球は、世界のどこかで洪水、干ばつが世界各地で起こっており、途切れることなく異常気象が頻発している。それに加えて大地震も起きている。

 高度経済成長からグローバル化へと経済の膨張の進行が、地球を狂わせている。知人から「サピエンス全史」という本を薦められ読ませてもらった。石器時代から21世紀までの人類の歴史が書かれたものだ。少々難しかったが、地球的視点からの人類史だ。そしたら次に送られてきたのは「人新世の資本論」。ノーベル科学者が、地質学的に見て地球は新たな年代に突入した。それを人新世と名付けたという。人間達の活動の痕跡が、地球の表面を覆い尽くした年代という意味らしい。近代化による経済成長は豊かな生活を約束していたはずだった。ところが「人新世」の環境危機によって明らかになりつつあるのは、皮肉なことにまさに経済成長が人類繁栄の基盤を切り崩しつつあるという事実である、と。

 少々面倒くさい内容だったが、うなずける内容なのだ。我々農家はずっと自然の現場で生活し、体感してきたといってもいいだろう。まず水質汚染が恒常化して元に戻らない。かっては川はきれいだったし清水は飲むことができた。水を買うなどということが不思議に思えてならなかった。そして大気汚染が進行したこと。花粉症などと言うものは大気汚染の変形だと思える。

 農の現場では、外来害虫の侵入=レタスにつく虫などいなかったし、トマトにつく温室コナジラミなども日本にいなかった種だ。アブラムシなど外来種も増えているように感ずる。それに雑草などもずいぶん増えた。グローバル化は、その影で目に見えない生き物を世界中から輸入?されている。病原菌などもそうではないか。自然環境の攪乱だ。じわじわと我々の生存環境=自然を攪乱させている。薬剤で処理すればいい、というものではない。悪循環が進むだけだ。人間の=科学で対処できると考える人間の傲慢さを改めるしかないと思うのだが、どうだろう。                    おかげさま農場・高柳功