お米の話

(産地の声)vol.1563 一農家のつぶやき。         2022.9.28

 先週に続きお米の話。文明という語りで言えば、日本はアジアモンスーン気候で、農耕文明から始まった国と言える。対してヨーロッパは牧畜文明。

 

 40年ほど前、まだドイツが東西ドイツに分かれていた時代だ。西ベルリンから東ベルリンに入りその体制の違いを実感した旅だった。その当時、西側と言われる国は15カ国余り(正確ではないかもしれないが)だったと思う。

 その当時人口5千万を超える国はイギリス、フランス、ドイツ、イタリアの4カ国であとはもっと少ない。15カ国で3億人くらいだった。その10年前に中国に行き人口が9億人ということを知って驚き、なお出産率が3%位あって人口対策が急務なんて言ってた。

 中国の3%の出産率は大きい。一年間で8千万人の人口が増えるというのだ。3年で2億人以上増える勘定になる。その後、一人っ子政策になるわけだが、国家としてはほっておけなかった訳だ。

 そういうことを思いながら欧州のことを思うと、なんと15カ国全部でも中国の3分の1の人口だ。欧州の大国でも日本の半分の人口なんだ、と。今はインドが中国を追い越し14億になろうというが、なぜアジアは人が多いのだろう。

 その理由の一つにお米のとれるところというのがある。生態学の先生曰く、全ての生き物は食べ物の量によって生存個体数が決まる。ざっくり言ってしまえば餌の量がその生き物の個体数を決める、というのだ。

 人類の3大穀物は、お米、小麦、トウモロコシというが、単位面積あたり米が断然収量が多く小麦の倍のカロリーを得られる。温暖な気候と言うこともあって、人という個体数も増えることができた。

 日本でお米が伝えられたのが三千年前というが、以来、一年も休まずお米を作り続け、日本は人口を増やし続けた。歴史的に見てお腹を満たしたのは1970年頃。日本農民のようやくの努力で初めて余るほどとれるようになった。

 ところがそれからが180度転換で、お米つくりを否定する減反政策が始まる。皮肉なことに!。グローバルなんとかで世界中から食料を買い集め自給率3割という国になってしまった。気候変動、異常気象の連続で食べ物が手に入らなくなったらどうするんだろう?。一方で戦争が始まり、あちこちで緊張状態がうまれているが、戦争は究極の環境破壊行為だ。地球環境問題が急務というのに矛盾する行為だ。何を考えているのか。人類の劣化が始まっているのかも知れない。

                          おかげさま農場・高柳