雨と汚れ

(産地の声)vol.1553 一農家のつぶやき。         2022.7.20

 

 先週は、慈雨のことを書いた。しかし続く雨に「もういいよ」と言いたかったが、そうもいかない。九州や関東東北とゲリラ豪雨が降り続いているというのに、そしてこの千葉でも南の方は豪雨警報が出されるほどなのに、この地は雨が少ない!。いずれ見舞われることだろう。

 

 農家は土に出会い土にまみれる。なので手や足が汚れる。足の方は長くつや地下足袋などをはくからまだいいとしても、手は泥だらけになることが多い。

 最近の若い人は手袋をするが、私はほぼ素手で仕事をする。畑から帰ると手洗いするが水道だけでは汚れが落ちない。手洗い場にはたわしが用意してあり、まずたわしでゴシゴシと泥落としをする。その上で石けんを使い洗う。

 その石けんは、県内の印旛沼石けんと呼ぶ食用油を原料としたもの。かって印旛沼と手賀沼という千葉県の沼は全国1.2位を争う汚れのひどい溜まりだった。

 公害が叫ばれ、工業、企業の排水によって水質汚染が進み、それが全国的な環境問題になっていた。がしかし、それは企業だけでなく家庭から出る雑排水も大きな原因だとわかってきたのだ。

 その中でも特に家庭から出る廃食用油が汚染の原因になっていることがわかり、婦人団体が呼びかけ、家庭ゴミの廃食用油を捨てないように、そして回収運動を大々的に展開、印旛沼と手賀沼の汚染対策が進んだ。

 困ったのは、回収した油で、その油を石けんにして有効利用しようとなった。石けんにすると分解が早く環境にもよろしいとなって、以来、石けんつくりが続いている。当農場の直売所にも置いている。

 そのけっけんがよく落ちるのだ。農家は機械仕事も多く、油汚れも手についてやっかいなのだが、その石けんは油汚れでもきれいになる。

 落ちないのは、トマトの渋だ。これは石けんごときでは汚れが取れない。いろいろ試したが、鍋の焦げ付きなどを取る金だわしが一番とれる。

 汚れと言えば、その昔、東京まで野菜を運んだときのことを想い出す。東京の汚れは田舎の汚れとは違うのだ。田舎の汚れは泥だらけと言っても自然の汚れなのに対し、東京の汚れは、排気ガスのせいなのか自然の汚れとは違った。

 長期予報では8月9月と猛暑が続きそうだ。在所の田んぼは穂が出始めた。来月は稲刈りが始まる。先週からの雨で、雑草も勢いを増している。無農薬栽培の一番の対策は雑草だ。対策を怠ると稲刈りに支障が出る。猛暑の中でも畝刈はせねばならない。頑張ろう。         おかげさま農場・高柳功