みどりの食料システム戦略

(産地の声)vol.1503                               2021.7.29

 おかげさま農場の片岡です。先週の話ですが農林水産省の「みどりの食糧システム戦略」というのをオンラインで視聴しました。 

 戦後、日本では農薬・化学肥料を使ういわゆる慣行農法によって、産地化、単一作物の大量生産が推し進められました。一方、欧米では「ノーケミカル(化学物質を使わない)」が広がっており、日本もついに「有機JAS法」が20年前ぐらいに成立しました。しかし、ほとんど広がらずむしろネオニコチノイド系殺虫剤や除草剤の使用量が「規制緩和」の名の下、ものによっては10倍使っても良い、といった状態になってしまいました。

 こんな感じで欧米に比べると有機農業後進国の日本ですが、世界では持続可能な世界を作るために、農業をさらにオーガニックにしようという潮流があり、その流れを受けて、日本でも今回の「みどりの戦略」が掲げられたのです。

 では、有機農業が持続可能な世界にどう繋がるのか、というと、まずそもそもの話で、農業は世界規模では地球温暖化や環境破壊の主たる原因の1つとなっています。日本とは違って世界規模では森林を焼き尽くし、地下水をくみ上げ大地を砂漠化する農法が当たり前に行われており、農薬は生物多様性を阻害し、肥料は産出、加工、運搬、施用後の環境放出などで温暖化に繋がっています。有機肥料も施用後の環境放出はあるのですが、ただ、化学肥料と違って有機物≒炭素成分を地中に戻すという意味で、計算上CO2削減に繋がると言われています。

 こんなことから、日本でも「みどりの戦略」では「2050年までに」という長期目標ではあるのですが、「ネオニコチノイド系を含む従来の殺虫剤に代わる新規農薬等の開発により化学農薬の使用量を50%低減。化学肥料の使用量を30%低減。耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%に拡大」という目標を掲げました。話を聞いていましたが、「健全な命を育て、健全な命を戴く」といった考えは全く入っていません。私には目標数字達成のための数字遊び話のように聞こえましたが、みなさんはどう思いますか?

 ちなみに、平成21年から平成30年の10年間で、有機農業の面積は45%も増加したのですが、日本全部の耕地面積からすると「0.4%から0.5%と0.1%増えただけ」です。0.5%を25%にする、という数字目標をどう実現するかといった施策も大事ですが、もっと根底にある、健全な命が宿る作物を育てることの意味、おかげさま流に言えば「食は命」という思想を持って取り組んで欲しいな、と思います。

                                  おかげさま農場・片岡