有機農業の目的

(産地の声)vol.1433                    2020.2.26

 おかげさま農場は設立32年目ですが、それ以前のことです。70年代近代農業のが始まり有機や無農薬栽培が議論になった頃のことです。

 

 持続性、永続性の事を考えると化学物質はなるべく使わない方が良い、と言う考えが出てきました。レイチェルカーソンの存在が大きいと思いますが、60年代に既に農薬の散布によって、その地域の生命が絶滅してしまったという「沈黙の春」が出版されました。生き物は生態系という系の中で循環する。食物連鎖という鎖のように密接につながっている。そしてその系の中で安全と言われる濃度であっても食物連鎖の中で濃縮され、やがて生物に影響を及ぼすようになる。それを生物濃縮と呼ぶ。といったようなことです。

 それが水俣病の発生で検証されたようなものです。この場合、有機水銀という金属でしたが、流していた企業は1ppm以下だから問題なしとしていましたが、それが魚で濃縮され、それを食べる人間の体内で濃縮され神経を冒し、数十人の人が亡くなり、さらに数万人と言われる水俣病を発生させたのです。かって地球に存在しなかった物質を人間は作り出しました。

 人間の細胞はそれに対応することが出来ません。それまで地球にあったものは長い年月の間に不要なものは体外に排出する機能を身につけましたが、存在しなかった物質は経験がないので体細胞が処理できません。で、体内に貯め込み、ある段階から神経を冒し、体の自由がきかなくなっしまう。

 レイチェルカーソンが言う「一度環境中にばらまかれた化学物質は回収できない。人間に制御できないものは、核と同じようにやめた方がいい」というメッセージを残しました。

 そうなると30年先50年先を考えた場合やってはいけないのではないか。有機や無農薬を始めた人達はそう考えたのです。持続性のある、そして将来禍根のない農法を続けようではないか。と話し合ったものです。今、有機や無農薬栽培を語る場合、食の安全が一番に語られますが、ちょっと論点が違うように感じます。自然の恵みに感謝する心も欠けているようです。

 今、コロナウイルスがじわじわと地球規模で感染が広がっていますが、グローバル化によって1国1地域の問題がたちまち地球レベルの問題となってしまうという実例です。目に見えない敵ですから手の打ちようもありません。必要とされるのは強い生命力しかありません。以降次回へ。byおかげさま農場・高柳功