TPP交渉が進んで

(産地の声)vol.1202   <TPP交渉が進んで>         2015.7.29

 

 グローバル化とは一体何だろうかと思います。グローバル化の正体は、結局経済(と言ってもお金的価値)の追求でしかないのではないか、と思うのです。

 

 新聞やTV報道によれば、TPP交渉は大詰めにさしかかっているようです。米国などとの協議で主食用米の特別輸入枠を設け、さらなる17万トンのコメ輸入を要求されているという。日本側は5万トン程度に抑えようとしている、などとさも努力しているかのような報道です。自由化ではなく米国の要求交渉です。

 「政府の方針で飼料米の作付けを増やしている中で、おかしいとしか思えない」、と岐阜県の大型農家が言います。以下、抜粋ですがコメ85ha、小麦75ha、大豆75haの平田パイロット代表の言葉です。

 「・・・日本人が作ったお米は家畜の餌になり、日本人は米国産の米を食べるなんて最低の選択だ。これを承認したら日本という国は、もう後戻りできないところまで落ちてしまうのではないか。・・・」

 前にもここで書きましたが、フランス人は農業問題と聞くと、われわれの食べ物の問題だ、と反応する。が日本人は農業問題と聞くと、農家の問題と聞き流して自分の問題とは思わない。

 私は長い間、都市に住む皆さんと産地交流をしてきました。その間ずっと感じて来たことは、あまりにも食べ物のこと、農業のことに対しての無知さ加減が気になっていました。

 自分の命が何処から来るのか、全く考えが及んでいない。店に並んでいるものが食べ物だ、お金を出せば買えるという感覚しかない。天地自然の恵があってこその人間であること。そこに感謝の想いや畏敬の念が欠けている。

 昭和37年農業基本法ができて、日本の教育が変わった。それは、農業を教えないという学校教育の方向転換からではないのか、と思う。そのあたりから日本人の知的内容、心の置き所が変わって来たのではないか、などと邪推しています。

 今年の稲は例年になく出穂が早いのです。65年生きて来てこれほどのことは初めてです。異常気象なのか、さらなる温暖化なのか判りませんが、大きく変化していることは実感します。世界中が地球の異変を感じている中で、経済主義だけが先鋭化して、地球の変化に対応できるのでしょうか。

 異常気象だけでなく、地震、火山の噴火、といった現象に経済主義は対応できないでしょう。人間生存のの足下が揺らごうとしている時代です。

                        おかげさま農場・高柳